早食い入門/各論2

早食い入門
各論2 〜早食い上級者への道〜


 食べるのが早くなったら、上級者へのステップアップを考えよう。
 そもそも、早食い上級者とは何なのか?常軌を逸した速さで食べる人だろうか?
 私の考える上級者とはそうではない。

 私の知り合いに早食い能力者がいる。その人は実際、食べるのが早い。しかし・・・とても見苦しいのだ。食器をカチャカチャ言わせ、物凄い勢いでむさぼり食うのである。おまけに、食べ終わってからハアハア荒く呼吸したりする。
 これはいただけないでしょ。
 なりふり構わずにガツガツ食べると確かに早い。しかしそんなのは早くて当たり前の話だ。
 上級者は、あくまでも優雅に、流れるように食べなければならないと思う。目標は「気が付くとあの人は食べ終わっている」と思われること。これが大事なのである。北斗の拳でいうところのトキやレイである。剛の食ではなく、柔の食だ。
 手のモーションはあくまでゆっくりにする。手の動きが速いと周りの人に気づかれるからである。実はこれだけでかなりのハンデを背負っている。だから、基礎で学んだ事を極限まで効率的に行わなければならない。それに加えて、さらなる工夫をするのだ。
 例えば、一度にたくさんの量を口に運ぶ。これによってストローク数を減らすのである。手のモーションが遅い分、口の仕事の方が早く終わりがちなので、運搬量の増加はバランスを取る意味でも有効だ。ただし、運ぶ量があまりにも多いと早食いがバレるので、多すぎないギリギリの量にしておくべし。
 また、汁物は最初は熱くて飲むのに時間がかかるので、最後に飲む。途中、手の動きに余裕があったら、さりげなくかきまわして冷ますとよい。
 ちなみに、ストローク数で考えると、カレーなどは動きに無駄がないので早食いに適している。だからそういう食べ物を選択すれば楽である。しかし、それでは早くて当たり前なので、みんなは驚かない。だから食べ物は他の人と同じものを注文するべきである。比較の基本は条件を同じにすることなのだから。
 と、このように上級者には厳しいノルマがあるのだ。早食い道の険しいところである。(私が勝手に決めたノルマにすぎないのだが)
 早食い能力者が、早食いをするのは全然構わない。しかし、一般人相手に手加減なしにその能力を使ってはいけないのだ。これは、格闘技の有段者がシロウト相手にケンカをしてはいけないのと似ている。

 最後に。早食い能力者全般に言えることなのだが、楽しく食事をしたい場合は早食い能力は使ってはいけない。
 特に、1対1で会食をする場合は決して早食いをしてはいけない。 早食い能力を使うと、会話に支障をきたすばかりか、あまりにも相手よりも早く食べ終わってしまうと、相手に「早く食べなければ」というプレッシャーを与えてしまうからである。せかされて食べる食事はおいしくない。時と場合を選ぶのが早食い能力者のエチケットだ。もっとも、楽しくおしゃべりをしながら食べれば、早く食べ終わることなどないのだが・・・
 というわけで、早食い能力はあくまでも、サラリーマンの昼食のような、食べる事自体に娯楽性のないシチュエーションで使うべきものなのである。
 それを踏まえた上で、早食いライフを満喫して欲しい。成功を祈る。

− 完 −

※早食いのコツや必殺技がありましたら、別段、美しさにはこだわりませんので。ぜひ教えてください。秘技「味噌汁ぶっかけご飯」とか(笑)。


  1999/03/30 no-be-