早食い入門/総論

早食い入門
総論 〜早食いとわたし〜


 私は、会社の昼は同じ課のメンツと一緒に社員食堂に行く。
 ある時、昼食に行く間際に急用が入って、みんなには先に食堂へ食べに行ってもらって私だけ遅れて行った事がある。私が着いた頃には、結構な時間が経過しており、すでに一人が食べ終わっていたほどだ。
 だが私は慌てず騒がず、己の能力である“早食い”を発動させた。その結果、課長が食べ終わる前に、私は全く同じメニュー(てんぷら定食)を食べ終わったのである。
 所用時間は3分弱。てんぷら定食にしてはまずまずのタイムだ。
 これ以後、私は会社では「早食い能力者」として一目置かれたのだった。

 私はもともと食べるのが早かったわけではない。むしろ、子供の頃は食べるのが遅かった。給食を食べ終わるのも決まって最後の方だった。
 小学生の頃、私はヒョロヒョロに痩せていて体重がとても軽かった。親から体重を増やせと言われて、どうやったら体重が増えるかを子供ながらに考えた。丁度その頃、人体か何かの本を読んでおり、そこから導き出された結論はこうである。
 食べてしばらくすると血糖値が上がる。それは満腹中枢を刺激し、人間はお腹がいっぱいになったと感じる。ということは、食べるのが遅いと、すぐに満腹になり、量をたくさん食べられないということになる。ならば、お腹がいっぱいになる前に食べられるだけ食べればいいのだ。それには早く食べなければならない。
 私は早く食べる特訓をした。子供なりに自分で発見した理論だったので、それを証明しようとムキになったのもある。こうして狙い通り体重は人並みに増え、私は今では立派な早食い能力者である。

 昔から「早飯早〇ソ芸のうち」という。大概のことは早いに越したことはない。遅いのを早くするのは至難の技だが、早いのを遅くするのは手加減すれば簡単だからだ。
 早食いのメリットは、時間が有効に使えることである。人間は一日に3回は飯を食べる。1回当たりの時間は短くとも、死ぬまで毎日食べ続けるのだから、積もり積もると結構な時間になるのではないだろうか。ちなみにタバコを1本吸うと5分間寿命が縮むという。ところが人生の密度で考えると、早食いによって5分間時間が有効に使えれば、事実上縮んだ寿命分がチャラになるのだ。うむ、早食いはヨイ。

 ところがである。一人暮らしではない私は、食事というものは自分一人で食べるよりも他人と一緒に食べる機会の方が多いのだ。一人だけ早く食べ終わっても、他の人が食べ終わるのを待っていなければならない。それじゃあ意味がないのよん(涙)。
 また、お腹がいっぱいになる前にたくさん食べてしまえるから、いつのまにか太ってしまうという極めて危険な事象が発生したりする。これはかなり憂慮すべき事態である。現在私は理想体重を若干オーバーしてしまい、ライト級のダイエットを実施中だ。

 といったところで、総論はこれで終わり。(総論って、要するに雑談なのね・・・)
 次の項では、実際に早食いの秘訣を論じることにしよう。

− つづく −


  1999/03/30 no-be-